1.クレヨンの歴史
以下に、三つの文献から引用する。それらの内容は必ずしも一致していないが、原文のまま記載した。
『クレヨンの名称は18世紀初め頃までは、今日に言うクレヨン以外にコンテ、パステル、鉛筆などを含めたものを意味していた。
クレヨンとは、天然の白亜(Craie)に小片を意味する(-on)がついたもので、デッサンなどに用いる固形の描画材料の総称として用いられていた。木炭もクレヨンの仲間だった。
当時はこれらの画材は、小さい弾丸に削り、クレヨンホルダーと呼ぶ小さい補助柄の先に挟んで使ったものである。今日にいうようなクレヨンはそれほど重視されず、むしろ油を全く含まないものの方が主流であった。
しかし、蝋や油を含むクレヨンの古い記録はレオナルド ダ ヴィンチの手記の中に『水も油も加えず使える固形彩色料の作り方』と題した一項目があり、これによると蝋を溶かして顔料を練り合わせ棒状にしたものを使うとある。これをレオナルドが実際に使ったかどうか作例は見つかっていないようだ。
16世紀には木炭を油出にて使う方法の記録がいくつかあるが、これもうまくかけたかどうかかなり疑問である。』
(引用文献 : 1978年-美術手帳10月号増刊「絵を書くための道具と材料」)
『日本では,大正6年ごろ、蝋に顔料を混ぜて色チョークと称して描画材料として使用されていたようで、当時、アメリカから同様のものが輸入され、大正7年ころこれの類似品が製造されてクレヨンと呼ばれ一般に使用されるようになった。』
(引用文献 : 油脂化学製品便覧
昭和38年版)
『ギリシャ時代にアンコスチックという絵の具が作られた。この絵の具はろうと顔料とを混和したもので絵を描くときに熱を加えて溶かし、筆で塗っていた。これは固まりやすい材料であるからこれを補うため鉄製の棒状のものを熱して、その上から延ばして描いたのである。ビベール、ボージャス等の画家はこのアンコスチック絵で有名である。その後これらは各地に伝播したが9世紀頃から下火になった。これがクレヨンの元祖である。
その後19世紀の終わり頃、フランスのパステル画家が紙に直接描ける棒状の絵の具を試作、フランスのクレヨンコンテ社がクレヨンと命名して発売したのが今日のクレヨンの始まりである。その後、欧州、アメリカへと渡り世界を風靡したのが、大正4〜5年頃であった。我国に入ったのは、東京美術学校の白演教授、自由画の提唱者山本氏らがアメリカ図画教育視察後、その優秀さを見とめて輸入、教材として使用され始めた。
国産製品が製造され始めたのは大正10年以降である。この新興描画材料クレヨンは大正8年頃から盛んに提唱された自由画と混ぜん一体となって急速に全国に普及し、文部省が学童用描画材最適品として推奨したほどであった。日本の図画教育は自由画の提唱とクレヨンの出現により新世紀を迎え発展していった。その他のクレヨン類としては、パステル、コンテ、パス等がある。
パステルは、17世紀頃に欧州において発明され、18世紀頃盛んに用いられたもの。顔料、体質顔料及び念決材を水で練り合わせて成型し乾燥したもので油脂は使わない。
コンテは、パステルと似ているが、パステルより固く折れにくい。顔料、粘土及び粘結剤を水と練り合わせ低温で焼き乾燥させて作ったもので油脂は使わない。
パスは、大正9年に桜商会においてクレヨンとパステルとの中間的性質を持つ、各特長を取り入れての創作、クレパスと命名登録したのに始まる。』
(引用文献:筆記用具の化学と材料 川端克彦監修、ぺんてる兜メ)
2.近年のトレンド
幼稚園から小学校低学年で使われるおなじみのクレヨンは、パッケージこそ今風のキャラクターを使っているが、中身の品質、価格等に大きな変化はないようだ。しかし、一般市場では、多色化と多様化が見られる。
◆多色化の例
クレヨンのJIS規格では、55色の式名と色度が規定されている。そのすべての色を揃えた"BC55"が1980年ころから売られている。
専門家用では、ホルベイン工業が1990年ごろから100色の"アーティストオイルパステル"の販売を行っている。
アメリカに限っては、もっと古く、HK Holbeinが、1970年代から225色の"アーティストオイルパステル"を販売している。
クレヨンでは、JALの景品で、"家族物語"100色が、私の知る限りにおいての最多色になる。また、普通色のほか、20年以上前から蛍光色のクレヨンが売られており、ここ数年は、パール色とラメ入りも目にするようになった。
◆ 多様化の例
従来型のクレヨン材料にポリオレフィン(ポリエチレンまたはポリプロピレン)あるいは、エチレン酢ビ共重合体を添加してあるものを総称してプラスチッククレヨンと呼ぶ。硬く丈夫で、通常のプラスチック製品を成型するインジェクションモールディングという方法により、自由度の高い形状に成型される。
消しゴムである程度消すことが出来る代わりに、紙の上での発色は色鉛筆程度に薄い。
1970年代にフランスで製品化され、サクラクレパスがそれを日本に持ち込みんで販売したのが「クーピーペンシル」。
なお、プラスチッククレヨンの特許は、それよりもっと古く、1957年と1958年にフランスおよびアメリカで登録されている。
折れにくい、自由な形、直接触っても手が汚れないなどの性質を利用して、ほかにもユニークな商品が市販されている。
幼児専用にデザインされた"ベビーコロール"。クレヨン製ボディーにギヤを内蔵して自走する"カケルカー"。ファンシー商品になった"クレヨンズー"などなど。
従来型のクレヨンに界面活性剤や水溶性高分子を加えて水に溶けるようにしたものを水性クレヨンと呼ぶ。
筆に水をつけて溶かし、水彩絵具のような効果を出すことが出来る。また、つるつるした表面であれば、濡れ雑巾でふき取ることが出来る。しかし、布や壁紙についた場合、界面活性剤の影響で色素が繊維の中に浸透しやすく、かえって汚れが落ちにくくなることがある。水性クレヨン="洗濯が容易"と考えるのは間違い。
今日市販されている水性クレヨンの原型は、1954年、日本とアメリカにおいて特許登録されている。(発明者:福田正三)
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